木造建築の普及 -前編-
寒さ厳しいこの頃ですが、家の近くで膨らみ始めた梅の蕾が、春の予感を感じさせてくれています。皆様、お変わりございませんでしょうか。コロナ禍も第六波が到来し、身近なところでも「感染者が出た」という声を聞くようになってきています。第六波が去り、コロナ禍の早期収束を祈るばかりです。
さて、昨今、建設・不動産業界のみならず、一般メディアでも建物の木造化の記事を目にする機会が増えています。本欄でもこれまで、「木造の可能性」(2017年6月号)、「木造ビル時代の到来」(2018年6月号)、「木造の復権」(2019年11月号)と3回にわたって木造中大規模建築の最近の潮流をご紹介してきましたが、潮流は一層確かなものとなり、中大規模建物の木造化は確実に進んできています。
そこで本欄では今号と次号に分けて「木造の中大規模建築の黎明期」と呼ぶにふさわしい現在に焦点を当て、木造化の進捗と今後の動向を探ってみたいと思います。
これまでを振り返るに、今から22年前の2000年に建築基準法が改正され、住宅やアパート以外の建物にも木造化の道が開かれ、その10年後の2010年には国が本腰を入れて木造化を促進すべく『公共建築物等木材利用促進法』が施行され、原則として「低層の公共建築物は木造化せよ」との号令がかかりました。
更に2021年6月には官のみならず、民間でも木造化推進を図るべく同法が改正され、公共建築物だけでなく民間の住宅やアパート以外の中大規模建築物にも積極的に木材を活用し、森林の適正な整備や木材自給率の向上を後押しするという環境整備がなされました。今年も、木造ビルへの支援策が更に打ち出される予定になっています。
地球環境の変化が云われだしてから久しいですが、昨今は起因する気候変動が世界各地で顕著に見られるようになり、SDGs(注1)やESG(注2)への取り組みが注目を集めています。そして、それが企業の価値や評価を決める指標ともなってきています。
待ったなしと云われる気候変動への緩和や適応の為に、建築のビジネスそのものが変わりつつあるのを、私も肌で感じています。これからは費用対効果ではなくCO2削減効果を基準に採用項目が決まる時代となり、住宅・建設業界も脱炭素へと舵を切るなか、二酸化炭素(CO2)を吸収・固定出来る木造建築物への注目度は高まるばかりです。
ここ5年間で、日本各地で中大規模木造建築が姿を現し、技術や材料、工法などの更なる進歩も加わり、大手のハウスメーカーやゼネコンだけではなく、中小の住宅会社も木造ビル市場に参入してきています。弊社も計画案件はあったのですが、残念ながら実現には到りませんでした。(涙)
そろそろ紙面が尽きてきたようです。
では、この続きはまた次号で。
注1)SDGs:「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称
注2)ESG:環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉
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